ヌーヴェル・ヴァーグ
ヌーヴェル・ヴァーグとは新しい波というフランス語で、1960年頃から数年間、フランス映画界で勢いを得た新人達を総称して言います。これは元来パリの左翼系適刊誌レクスプレスが、若い学生や青年達の新しい政冶的文化的運動を指して造ったと言われますが、今日ではもっぱら映画についてのみ用いられています。ヌーヴェル・ヴァーグと目される人達は、どちらがというとこの呼称に反対で、自分たちはみなそれぞれ独自の個性を持っており、共通の思想も共通の主張もないと力説していました。1958年ルイ・マル監督の恋人たち、がヴェニス映面祭でグランプリを獲得したのがヌーヴェル・ヴァーグのはじまりと言われます、続いてクロード・シャブロール監督のいとこ同士。フランソワ・トリュフォー監督の大人は判ってくれない。リュック・ゴダール監督の勝手にしやがれ、という風に、30歳未満の若い作家が一挙に輩出して、世人を驚かせました。これらの映画はいずれも何らかの形で型やぷりで、古いモラルや秩序に対する否定と挑戦に満ちている点では一致していました。彼らの大半が、撮影所で助監督としての修業を積むといった普通のルートで映画入りをしたのてはなく、カイエ・デュ・シネマという映画評論誌に執筆していた映画批評家出身であり、映画技術はシネマテーク・フランセーズの試写室で名作映画を徹底的に分析研究してその中から身につけたことは有名でした。彼らが、在来の常識や定石にとらわれずに、自由奔放な映画を作れたのはそのためでした。ヌーヴェル・ヴァーグが国外に及ぼした影響も広範で、ドイツ、東欧、ソ連、アメリカ、そして日本にも渡来して、いわゆる松竹ヌーヴェル・ヴァーグの発生をうながしたことば周知の通りです。

copyrght(c).cine-ma.all rights reserved